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PRINTED MATTER IS A MATTER
PRINTED MATTER IS A MATTER ー印刷か、版画か、それが問題だー

赤本 啓護 新井 麻弓 安斎 歩見 越智 也実 風早 小雪 瀧 千尋 塚本 暁宣 パク ポギョン

企画:湯浅 克俊 三木 茜

 

本展覧会のタイトルは「Printed matter is a matter -印刷か、版画か、それが問題だ。」です。興味深いことに、この企画に関わる全員がこのタイトルに異議を持ちませんでした。彼らはアーティストであると同時にプリンターですが、<版画>が印刷の歴史の上に成り立つことを知りながら、このタイトルを受け入れるというのは何を示唆しているのでしょうか。


そもそも、版画は宗教や思想の普及の手段として誕生しました。その後、瓦版、広告などに用途が拡がるにつれ、徐々に職人の手を離れ機械化されていったのは社会の要求に応じた結果であることは間違いありません。 一方で私たちは、こういった複製技術の歴史と分離するかのように、版画というものを<美術>という名前の元に価値付けてきました。日本においては明治30年代後半から40年代初頭の間で徐々に普及していった美術としての版画ですが、40年代に入ると輪転機の普及で印刷技術の工業化はますます進み、より早く大量の印刷ができる実用性重視の時代が訪れました。今日ではデジタル技術の応用も可能となり、更に多種多様な表現が生まれ、写真や映像などマスメディアにアクセスしやすい複製技術は私たちの日常生活に浸透しました。一方で生産性、普及性において元来の需要を失い、<美術>という枠組みに守られた版画はどうでしょう。


本展覧会の主旨は、印刷物と版画作品の単なる二項対立を狙ったものでも、版画の歴史的な再評価を問うものでもありません。むしろ既にそういった価値付けが意味をなさないことを前提とした上で、<版画>たらしめてきたその要素の抽出し、芸術活動のなかでいかに版表現の思考や技術を実践していくのか作家が個々の方法で試みるものです。


アントニオ・タピエスは著書「実践としての芸術」(1996, 水声社)の中で「芸術作品が与える感動には大小があり、それが、作品の現代性の尺度である。」と述べています。形式化された制約の中で、彼らの版画へのこだわり、あるいは問いかけが反映された作品から、現代性の尺度をはかる実験とも言えます。これまで私たちが当たり前のように受け入れてきた<版画>とは何なのかを問い直す時期にきていることを認めなければなりません。
本展覧会が、版画がかつての制約を超えるためのドキュメントの手法として機能していくことに、微力ながらも貢献することを願っています。

キュレーション 三木 茜

 

Print as an image medium −イメージメディアとしての版画−

写真とは印刷か、版画か、それともプリントであろうか? 写真の本質とは肉眼の視覚とは異なる、新たな視覚の様式をもたらしたということであり、プリントアウトの方法に関してはあまり議論されない。これまで多くの絵画論、写真論というものが語られて来たのに対して、版画論というものは存在しないに等しい。それはなぜなのか? 版画には様々な技法、伝統、歴史が存在するが、哲学が不在している。そこで私は版画をイメージメディアという言葉に置き換えて考えてみたい。


イメージメディアとは私たちの視覚、知覚、記憶、想起に関わり、手に入れた様々な情報を脳にいかにしてプリント(定着)させるか、そしてその情報をいかにプリントアウト(出力)するかという人間の存在そのものに関わっている。写真評論家の港千尋は著書の中で「記憶は構築であり再構築である。記憶は創造であり再創造である。‥‥われわれの記憶とは、現在の前後関係や情動によって、現在に適合されるように築かれる現在であり、現在に適合されるように築かれる過去なのである。」(『記憶』講談社)と言っている。絵を描くとは、世界を絵に変えることであるが、それに対してイメージメディアとは世界を映像化、記号化、版化することである。


版画はよく間接的表現だと言われる。版を介すことによって偶然性を引き寄せ、自ら意図しないことまでも表現に取り入れる。ところで、私たちは過去の経験や情報、周りの環境や状況の影響無しに何かを「見る」ことはできない。私たちは港千尋が言うように現在に適合されるように築かれた現在を見ている。版とは過去の像(イメージ)である。版に絵を描いた過去、元の絵があった過去、それらの過去は刷りの工程を経て現在に適合されて行く。版画とはつまり私たちの記憶のプロセスを可視化し、過去と現在を結ぶ媒体(メディア)であると言える。


版画をイメージメディアとして捉えてみるととても普遍的で重要な哲学を含んでいるように思う。私たちの存在そのものに関わり、<過去−現在−未来>に関わっている。版画というメディアはなぜ生まれたのか。それは大切なことを多くの人に伝えたいと考えたからである。ならば私たちは原点に帰り、何を今伝えたいのかを考えなくてはならない。昨年の大震災以降、私たちがどれだけ不安定な地の上に暮らしているのかが分かってきた。そんな不安定で、いつまた来るか分からない自然災害に備え、それでも自然と寄り添いながら、未来に伝えなければいけないことを真剣に考える時が来ている。

湯浅克俊

 

会  期
2012年7月5日(木)~7月8日(日)
12:00-19:30  
Opening Party
2012年7月5日(木) 18:00~19:30
Closing Party

2012年7月8日(日) 14:00~ 16:30

トークイベント
ゲスト

版画工房 KIDO PRESSの木戸均さん (14:00 - 15:00)
活版印刷 弘陽の三木弘志さん (15:00 - 16:00)

版画の話、印刷の話、プリントの話、色々な面白いお話が聴けると思うので皆様お誘い合わせのうえお越しください!

 

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